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 <特集2>資源循環型社会創造への挑戦@

  
  
地域分散型のバイオマス利用を考える
 

 

東京農業大学地域環境科学部生産環境工学科 
牧 恒雄 教授
 

  石油や石炭などの化石燃料に替わる新エネルギーとして、バイオマスエネルギーが注目を集めている。東京農業大学総合研究所が開設した「エコテクゾーン」は、バイオマス利用を柱とする研究開発の成果を駆使した循環型社会の構築モデルだ。約4年間にわたって、その推進役を務めてきた牧恒雄教授に、バイオマスの利用技術の現在についてうかがう。
 
  ●バイオマスが柱 「エコテクゾーン・プロジェクト」
    東京農業大学世田谷キャンパスの一角に、「エコテクゾーン」と名付けられた施設群がある。「食」「環境」「健康」「資源・エネルギー」を教育・研究のキーワードとする東京農大の総合研究所が、その研究成果を広く知ってもらおうと開設したもので、資源環境負荷の少ない農業技術を開発し、安全で安心できる食料を確保するとともに、農林産廃棄物や食品廃棄物を再資源化、エネルギー化することによって、循環型社会を構築するためのモデルゾーンである。
   現在、食品廃棄物や街路樹の剪定などによって出た樹木ゴミを再資源化、エネルギー化する「リサイクル研究センター」と「バイオマスエネルギーセンター」、自然エネルギーを利用したガラス温室で新農業システムを開発する「ロボット農業リサーチセンター」、ボルト1本で組み立てられる「エコテクハウス」、そして、これらのセンターで開発された技術や素材を使った自然復元モデルである「ビオトープ」の5つの施設がある。
   これら施設群の研究開発の柱となているのが、農村及び都市部に散在するバイオマス(生物資源)の活用だ。利用可能なバイオマスのおもなものとしては、@廃棄物系バイオマス(家畜糞尿や敷き料、家庭や外食産業などから出る食品廃棄物、食品工場、製紙工場、製材工場などからでる産業廃棄物、下水汚泥)、A未利用バイオマス(間伐材などの林産資源、稲ワラなど農作物の非食部分)、B資源作物(サトウキビなどの糖質作物、イモなどのでんぷん作物、菜の花など油脂作物)などがあげられる。循環型社会の構築にとってとくに問題になるのは、@とAの、通常、ゴミとして廃棄、焼却されるバイオマスである。
 

  ●樹木ゴミから舗装材をつくる
   従来、こうしたバイオマスの利用としては、第一に肥料化が進められてきた。東京農大でも、廃棄物の肥料化技術の開発にいち早く取り組み、現在、エコテクゾーンの「リサイクル研究センター」では、毎日、世田谷区の学校給食センターや学内の生協食堂から集めた生ゴミ約500sから約80sの有機質肥料を生産し、「みどりくん」の名称で販売している。総合研究所の前所長で、約4年間にわたってエコテクゾーン・プロジェクトを進めてきた牧恒雄教授はこう語る。
  「生ゴミをその日のうちに乾燥させて悪臭が出ないようにしています。それを粉砕して尿素を加え、ペレット状に成形して、農家に抵抗なく使ってもらえるよう工夫しました。畑はゴミ捨て場ではないですからね」
   生ゴミからペレット状肥料をつくる研究を直接手がけたのは、応用生物科学部生物応用化学科の後藤逸男教授だ。牧教授自身は、街路樹や公園の樹木などを剪定する際に出る樹木ゴミを半堆肥化し、歩道の舗装材や緑化基盤材として利用する技術を開発した。
  「樹木ゴミというのは、なかなか分解しにくいものなんです。東京都をはじめ多くの自治体が、これを堆肥化する施策をとってきましたが、時間と費用をかけたわりには使い途が狭く、結局、余った堆肥は産業廃棄物として処理せざるをえない場合も多い。また、堆肥化するには広い用地が必要ですが、都市部でそれを確保するのは難しく、遠隔地に運搬して処理するとなると、トラックの排気ガスの問題も出てきます」
   そこで、樹木ゴミを粉砕してチップ化し、鶏糞を10%程度加えて一カ月ほど堆肥化し、ウレタン樹脂を混ぜて舗装材とする技術を開発した。樹木チップは一度堆肥化してあるので、土に接した部分から分解がはじまり、4〜6年で土に還る。ウレタンそのものも微生物によて分解されるので、4〜6年後には、再度、樹木チップを置くことができる。自然の色合いが見た目にも優しく、弾力性、透水性に富んだ快適な舗装材だ。樹木チップは、道路脇の法面緑化の基盤材としても利用できる。山林を切り開きながら進める道路建設などでは、通常、大量の樹木廃棄物が出る。しかし、これを緑化基盤材として利用すれば、廃棄物が出ないばかりか、周辺の自然復元に一役をかうこともできるのだ。
  「この樹木ゴミのリサイクルは、一見ローテクのようで、さりげなくハイテクが入っています。その1つが樹木ゴミをチップ化する方法で、ただ細かくするだけでなく、繊維状にほぐすということをしているんですね。すると、表面積が格段に大きくなって分解しやすくなります。わざわざ腐りやすい舗装材をつくるなんて、これまでだったら考えもしないでしょう。けれど、その発想の転換が、循環型社会の新技術を考える際には重要なポイントになります」
 

  ●樹木ゴミをペレット燃料にする
   しかし、バイオマスを肥料としてリサイクルするには限界がある。現在、日本の野菜類の自給率は60%程度。肥料を生産しても、それを使う畑地は減っている。そこで、次に開発が進められたのが、バイオマスのエネルギー化技術である。
  「実は、現在の農業の中で一番不足しているのは、エネルギーなんです。トラクターなどの大型機械もあるし、ハウスでは重油などの燃料を使っている。ゴミを肥料にするよりも、エネルギー化したほうが、ニーズがあるのではないかと考えました」
   平成16年に開設した「バイオマスエネルギーセンター」では、現在、「生ゴミからメタンガスを得るシステム」、「生ゴミからエタノールを得るシステム」、「樹木系ゴミからペレット燃料を得るシステム」の3つが稼働している。前2つは応用生物科学部醸造科学科の鈴木昌治教授が担当し(別稿参照)、3番目を牧教授が担当した。
  「樹木系ゴミからペレット燃料を得るシステム」とは、果樹の剪定枝葉や、稲ワラや籾殻など農産物の非食部分を半炭化し、粉砕してペレット状に加工する装置である。出来た燃料は、ハウス栽培のボイラーなどに利用できる。
 
  「なぜ半分だけ炭化するのかと思うでしょう。生木は燃えにくいけれど、炭にすると燃焼効率が上がります。しかし、完全な炭にするには、生産過程での環境負荷が大きくなります。どうしたら環境負荷が最少で、しかも燃焼効率のよい燃料を得られるかと考えて、半分だけ炭化する方法を開発しました。具体的には、圧力釜の中で1時間ほど高温の水蒸気をあてて炭化させます。バイオマスエネルギーセンターで稼働している装置の圧力釜部分は、市販の汎用水蒸気ボイラーを使っているので、蒸気温度200℃、2Mpaまでしか上がりません。使ったボイラーは150万円です。もちろん、もっ性能のいいボイラーを使えば、もっと短時間で炭化できます。しかし、そうすると、装置の価格がすぐに500万、1千万になってしまいます」
   およそシステム全体で500万程度で購入できるような低価格の設備を考えることも、研究の1つだという。
  「大量生産、大量消費の時代はすでに終わっています。バイオマス利用も、地域にある資源を地域で利用する時代です。大型で高価なシステムを構築するよりも、手に入れやすく、身近に置けて、明日からでも使ってもらえるようなものを開発しようというのが、ここの基本コンセプトです。農家の人が、リンゴやナシの剪定をして樹木ゴミが出たら、自分で運んでいって機械を動かし、ペレット燃料をつくる。そんな感じで使ってもらえればいいと思うんです。それから、燃料の場合、大きな固形物だと扱いにくいので、ペレット状にしました。ペレットにすれば流れるので、液体燃料の感覚で使えます。木やワラのままでは誰も使いたがりませんが、『使いやすさ』という付加価値をつけてあげると、使ってもらえます。そういう技術的配慮がバイオマス利用には必要だと思います」
 

  ●農大はおもしろいことをやっていると思ってもらえればいい
   毎年約3千人が、この「エコテクゾーン」を訪れる。
「環境教育に役立つということで、幼稚園児から高校生までたくさんの子どもたちが見学に来ます。それから、環境ビジネスに関心のある企業や自治体の人、JAICAの研修生など、実にさまざまな人がみえます。子どもたちにはビオトープが人気です。大人は、リサイクル研究センターやバイオエネルギーセンターの装置を見ると、自分のところでも扱いたいとか、いくらで購入できるのかとか、必ず聞きてきますね。実物が置いてあることが強みです。何ができるか、すごくわかりやすい。『エコテクゾーン』を見て、農大っておもしろいことをやってる大学だなと思ってもらうことが、私の仕事の1つでもありますね」
   牧教授は、現在、総合研究所の研究事業部長を務めている。
  「研究開発を進めるための産学連携の枠組みをつくったり、バイオマスエネルギーを利用するための地域全体のプランづくりをしたりするのが、今の私の仕事です。何か問題を抱えて相談にみえた方に、その分野に詳しい研究者を紹介したりもします。それで、次の世代に貢献できればいいし、環境に優しい技術が社会に広まればいいと思いますね」
  「エコテクゾーン」では、川崎市と提携して、より大規模な「生ゴミからメタンガスを得るシステム」が平成17年度から稼働する予定だ。
 

  聞き手:ルポライター 秩父啓子
   
   

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