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 <特集2>資源循環型社会創造への挑戦A

  
  
醸造技術を利用した蒸留廃液の出ない生ごみの固体エタノール発酵法の開発
 

 

東京農業大学応用生物科学部醸造科学科 
鈴木昌治 教授
 

  地球規模の環境問題とエネルギー枯渇問題を背景に、近年ますます注目を浴びているのがバイオマスエネルギーだ。東京農業大学の鈴木昌治教授は、酒の醸造技術を使って、食品廃棄物からエタノールを生成する技術を開発した。鈴木教授に、その研究の現在をうかがった。
 
  ●急がれるバイオマスのエネルギー化
   2005年2月16日、「京都議定書」が発効した。「京都議定書」とは、二酸化炭素など地球温暖化の原因とみられる温室効果ガスを地球規模で減らそうと、先進国における排出量の削減目標を定めたものだ。これにより日本は、08年〜12年の5年間で、1990年時点での温室効果ガス排出量の6%を削減しなければならなくなった。
   二酸化炭素の増加は、18世紀の産業革命以降、石油や石炭などの化石燃料の使用が爆発的に増えたためとみられている。200年前の空気中の二酸化炭素濃度は280ppmなのに対して、現在では380ppmにも達している。
   また一方で、化石燃料の資源枯渇問題も深刻だ。世界の埋蔵原油は、このままのペースで採掘をつづければ、あと40年ほどで底をつくといわれている。石油の供給を99%輸入に頼っている日本にとって、化石燃料に替わる新エネルギーの開発は、まさに急を要する問題なのである。
   こうした問題を背景に、近年、ますます注目を集めるようになったのが、バイオマス(生物資源)エネルギーである。バイオマスとは、元来、生物(バイオ)の量(マス)を意味し、1年間に地球上で生産されるバイオマスは、陸上で1150億t、海洋で550億tにも及び、これをうまくエネルギー化できれば、現在使われているエネルギーの10倍をまかなえる計算になるという。地球上のバイオマスを全部使いきるのはとうてい無理な話だが、その無尽蔵さを示す話としてはよく理解できる。
   また、地球上に存在するバイオマスを利用する限り、地球の二酸化炭素量は増加しない。燃焼時には二酸化炭素を排出するが、再び植物によって吸収・固定されるためで、この性質をカーボンニュートラルという。現在、その多くが廃棄物として焼却処分されているバイオマスをエネルギー化し、化石燃料の替わりをさせれば、二酸化炭素排出抑制につながることは間違いないのだ。
   東京農業大学の鈴木昌治教授は、このバイオマスのエネルギー化を伝統的な醸造技術を使って成功させた。
 

  ●生ゴミから固体発酵でエタノールをつくる
   鈴木教授が利用したバイオマスは、同じ応用生物科学部の後藤逸男教授が開発した「みどりくん」だ。「みどりくん」は、世田谷区の学校給食センターと農大生協の食堂から出た食品廃棄物を乾燥させてつくったペレット状の肥料で、東京農大の「リサイクル研究センター」で、毎日、生産されている。食品廃棄物を原料とする「みどりくん」には、米や小麦などの食品に由来する糖質が含まれている。この糖質を発酵させて、エタノールを生成しようというのだ。鈴木教授はこう語る。
  「私が開発したエタノール発酵の1つの大きな特徴は、固体のまま発酵させるということです。固体のまま発酵させると、廃液が出ません」
   同じ廃棄物を使ったエタノール生成でも、従来の、例えば、ブラジルで行われているサトウキビから砂糖を精製した後の廃糖蜜を使ったエタノールは発酵では、液体発酵のために、蒸留した後、廃液と蒸留残渣が出る。廃液は、以前は海洋投棄されていたが、ロンドン条約以降はそれもできなくなった。廃液には、アミノ酸や油脂など、環境に影響を与える物質が大量に含まれているからだ。
  「この廃液処理に苦労するのです。ブラジルは土地が広いので、廃液を土地に撒いて処理しているようです。でも、日本で、それはできません。だから、廃液を出さない固体発酵という方法を開発したんです。固体発酵によるエタノール生成は、唯一農大だけがやっている方法です。アメリカでも、トウモロコシからエタノール生成をしていますが、これも液体発酵です」
   固体のまま発酵させて蒸留すると、残渣も固形で残る。残渣は、微生物性のたんぱく質が高濃度に蓄積した良質の資料や肥料となる。
  「現在、日本の法律では、ガソリンに混合してよいエタノールの量は3%までですが、ブラジルでは、エタノールを最高80%まで混合してもよいことになっています。日本でも、2、3年後には10%程度混合してもよいことになるでしょう」
 

  ●酒の醸造技術が生きる
   固体のまま発酵させる−−そんなことができるのだろうか。
「中国には、白酒(ばいちゅう)といって、固体発酵でつくった酒があります」
 鈴木教授は、醸造学が専門で、もともとは麹の研究などをしていた。固体発酵という発想も、17、18年前に醸造の研究で訪れた中国の酒造りにヒントを得た。
「手順的にはまさに酒造りです。ただし、飲めませんが」
   固体発酵は、液体発酵に比べて難しい。それに、米や小麦などのでんぷん質は、そのままでは発酵しない。エタノールをつくる酵母菌が働けるよう、でんぷん質を糖に換えてやらなければならないのだ。そこで、ある程度水分を加えた「みどりくん」に麹菌を加えて麹をつくり(製麹)、さらに酵母を加えるという手順が必要になる。
  「麹と酵母は、焼酎をつくるときの麹と酵母を使いました。いくら一度乾燥処理してあるとはいえ、食品廃棄物には雑菌がたくさん含まれています。焼酎の麹はクエン酸を多く出すんです。これが雑菌による腐敗を防ぐと思われます。清酒の麹はクエン酸をあまり出しません。だから、暖かいところで清酒をつくると腐ってしまうんです。麹に焼酎用をつかったので、酵母もクエン酸に耐性のある焼酎用の酵母を使いました。麹もそうですが、酵母もいろいろな種類があって、70種くらいを試して、そのうち4種類くらいが固体の状態でも比較的うまく働いてくれることがわかったので、最高値を示した酵母を採用しました。この技術は食品廃棄物だけでなく、竹串やたばこのフィルターなど、セルロースを多く含む廃棄物にも利用できます」
  「みどりくん」10sから1gのエタノールが生成できる。ということは、
  「約40sの食品廃棄物からおよそ1gのエタノールが得られることになります。日本で1年間に出る食品廃棄物の量は約2千万t、東京ドーム53杯分といわれています。これが現在は、化石燃料を使って90%焼却されているわけですから、もったいない話です。『みどりくん』に含まれる糖質は約18%ですから、より多くの糖質を含むパン工場やうどん工場などの廃棄物なら、さらに効率よくエタノール化ができると思います。工場内を走る運搬用の作業車を食品廃棄物からつくったエタノールでまかなうことも夢ではないでしょう」 廃棄物の処理に悩む食品関連会社やエコタウン構想を持つ自治体からの問い合わせがひっきりなしにある。
  「固体発酵なら、発酵層などの装置も小さくてすみます。使える装置だと思いますよ」
 平成14年、日本政府は「バイオマス・ニッポン総合戦略」を策定し、バイオマス利用は国の施策となった。エコ・ビジネスは40兆円規模の産業に成長するだろうといわれている。バイオマスをエネルギー化する技術は、環境に優しいだけでなく、大きなビジネスチャンスを秘めているのだ。
 

  聞き手:ルポライター 秩父啓子
   
   

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