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 <特集2>資源循環型社会創造への挑戦B

  
  
菜の花は畑の油田 地域活性化に火を付け全国にひろげよう
 

 

菜の花プロジェクトネットワーク
 藤井絢子 会長 
 

  菜の花プロジェクトは、琵琶湖をきれいにしたいという主婦を中心とした草の根の運動から始まった廃食油回収に始まった活動は、資源循環型社会構築を目指し、活動範囲が次々と広がり、全国に波及している。菜の花プロジェクトネットワークの藤井絢子会長に経緯と活動内容をうかがう。
 
  ●琵琶湖をきれいにしたいという願いが 菜の花プロジェクトを生み出す
   菜の花プロジェクトは,琵琶湖をきれいにしたいという主婦を中心とした草の根の運動から始まった。その活動は時代の中で大きな風を巻き起こし,次第に日本全国に拡がっていった。琵琶湖の赤潮発生問題を契機に、廃食油の回収と石鹸へのリサイクル活動が中心となり,続いて廃食油からBDF(バイオ・ディーゼル・フューエル:軽油代替燃料)への精製と活用、そして,菜の花栽培にまで活動を広げ,資源の生産―使用−回収−再利用という資源循環のサイクルを完成させた。そして現在,その活動はさらに広がり,農業の振興を基本としながら地域経済の活性化を目標に掲げた活動を行っている。現在,菜の花プロジェクトは目覚しい勢いで全国に波及している。しかし、その道のりは決して平坦なものではなく、困難な問題との格闘の日々であったと菜の花プロジェクトネットワーク会長藤井絢子氏は述懐する。
  1977年琵琶湖に大量の赤潮が発生し、有リン合成洗剤などの家庭排水がその原因と考えられた。地元の主婦たちは、家庭から出る廃食油を回収し環境にやさしい粉石けん作りを計画、琵琶湖の環境を守るためのリサイクル運動を展開した。この運動は県を動かし、1980年滋賀県は有リン合成洗剤の使用を禁止する条例(琵琶湖富栄養化防止条例:石けん条例)を制定する。しかし条例制定後、洗剤メーカーが無リン合成洗剤を開発し販売したため、粉石けんの使用率が激減してしまった。そのため、粉石けんの原料だった廃食油が使われなくなり、大量の廃食油が倉庫に積まれることになった。
  そうした中で、1990年全国初の環境を専門とした生協「滋賀県環境生活協同組合」が設立され、家庭から集まる廃食油の処理に挑戦した。理事長の藤井氏が廃食油の新しいリサイクルの仕組みづくりを試行錯誤している時、ドイツの菜種油を精製して環境に優しい燃料で車を走らせる「菜種油プログラム」に出会う。ドイツのエネルギー作物関連団体による冊子の「カルチャー・アズ・エナジー・サプライヤー(エネルギー供給者としての農業)」というタイトルを見たとき、「農業って食糧生産だけではないんだ」と頭をガツンと殴られたような衝撃を受けたと藤井氏は当時を振り返る。ドイツの食料自給率は100%を越えており、農作物の生産調整の一環として「エネルギー作物」の作付けを行っていた。藤井氏は「そのときまで菜の花のことは全く考えていなかった」と述べている。
 

  ●地域住民,関係機関と一体で夢を育む
   廃食油精製プロジェクトの最初の拠点として選んだのは、琵琶湖の東側に位置する人口およそ5,700人の小さな町、愛東町だった。愛東町では琵琶湖の赤潮発生問題を解決するため,町の職員も住民も積極的に廃食油の回収、石けんへのリサイクルなどに取り組んでおり,「菜の花プロジェクトが成功するための下地はすでにできていた」と藤井氏はいう。プロジェクトの第一歩として、1995年3月にテストプラントが愛東町に設置された。それを契機に、「廃食油が軽油の代わりになれる、てんぷら油で車が走る」というキャッチコピーで、愛東町の住民にプロジェクトを理解してもらうための啓蒙活動を徹底的に行った。
  具体的な菜の花プロジェクトは、1998年町内の約0.5ヘクタールの小さな土地に菜の花を植えることから始まり,現在では約25倍の8ヘクタールにまで菜の花畑が増えている。搾油した菜種油は各家庭や学校給食で使用され、搾取残渣である油かすは肥料に、さらに利用された菜種油の廃食油も回収され燃料として利用されている。
  「全国に活動が広がったのもあっという間だった」と藤井氏は語る。この目覚しい普及は、愛東町の試みを全国展開したいと思っていたメンバーや、再生石鹸運動の全国ネットワークといった人的ネットワークによるところが大きい。また、廃食油再生プラントが全国で400箇所以上稼動していたたことも普及を促進した要因の一つといえる。
 

  ●菜の花効果
   菜の花プロジェクトの面白いところは、プロジェクトの展開によって、農業の現場からさまざまなアイディアが生まれ、その地域に潜在的に埋もれていた資源や住民のエネルギーが掘り起こされ,自主的な地域づくりが展開したことである。昔は,菜の花畑は全国いたるところに見られ,待ちわびた春のシンボルの景色でもあった。そのため,菜の花プロジェクトは,「日本の昔の風景」を取り戻す運動にもつながると藤井会長は考え、その予想はまさに当たったといえるだろう。また、「菜の花効果」はリサイクルだけではなく貴重な副産物をもたらした。菜の花プロジェクトネットワーク事務局長山田実氏は、「菜の花が単にバイオマスを振興するための手段としてだけに終わらず、プロジェクトのシンボルとしてのイメージ−鮮やかな黄色とミツバチが飛び交い蜜を集めるというかつての春のわくわくした風景−に良く合っていた」と述べている。また、観光効果も高く、それに付随して菜の花の特産品はもとより地元の野菜や果物などの元々あった特産品も売れるようになった。
 

  ●菜の花プロジェクトがめざすもの
   藤井会長は「私たちが最終的に目指しているのは、地域が元気になることです。地域の経済が元気になることが一番大事であり、それには足元にある資源を活かすこと、まさに地に足をつけた運動が大切です。それは、第1次産業すなわち農業なしには語れません。」と主張する。
   また菜の花プロジェクトは行政をも動かす力となった。プロジェクトでは、菜種だけでなく籾殻をくん炭にして有機肥料とし,地域の農家に供給し環境に優しい農産物の生産づくりに貢献している。こうした活動は,滋賀県の「こだわり農産物」という環境に優しい農業を推奨する認証制度の制定に大きな影響を与えた。さらに2002年にバイオマス日本が農林水産省の主導でスタートし、1府6省によるBDFの検討委員会も始まった。琵琶湖畔の小さな町の活動が,愛東モデルとして全国の多くの地域で共感をもって受け入れられ,その共感ネットワークの力が国を動かしたのである。
   菜の花プロジェクトは、基本的には地域の経済発展を目標としている。それには、まずプロジェクトによって生産されたものが地産地消されているかどうかを検証する必要がある。山田氏は「農業問題を農業だけで解決しようとしても無理です。エネルギー・環境・福祉・教育・防災など、さまざまな分野と連携しながら農業の役割や将来を考えていかなければならない」と述べている。現在,菜の花プロジェクトでは菜の花の作付面積を増やす方法を検討中であるが,これを実現するためには,ドイツで実施されている「化石燃料は課税、非化石燃料は非課税」というような制度設計が必要である。こうした制度を構築するためには,地域にある農業をベースに地域発展させるためのアイディアを創造し,国に提言することが重要であると藤井氏は語る。
   また,藤井会長は菜の花プロジェクトのゴールについてこのように述べている。「子供たちにとって、この地域に住み続けたいという地域になるということが最終的なゴールと言えるかもしれない。今の時代、どこに行っても子供たちが精神的に不安定である。自分の未来も見えない。いろんな生涯設計の保障もない。大学を出て、せっかく働きだしてもある日突然会社がなくなってしまう。それぞれの生まれ育った地域で住みつづけたいと思ってもらうには、さまざまな受け皿をつくっていかなければならない。何年かかるかはわからない。しかし、私たちは次世代の子供たちのために、世の中の動いていく方向に対して責任を持たなければならない。」
 

  ●研究者への期待
   藤井氏は「学者は研究室で細分化された学問をするのみにとどまらず、地域の人々にトータルなアドバイスや指導をしてほしい」とも述べている。社会的な課題を、研究者がその地域の人びとと一緒に考えてくれる問題解決と戦う学会が必要であると強調する。現在活動中の菜の花プロジェクトは全国で130以上あるが、優れた活動を展開している地域には,地域課題を解決することを研究テーマとしている研究者が参加しているという。
  最後に藤井会長から実践総合農学会ならびに『食農と環境』の読者へのメーセージを伝え結びとしたい。
「本年4月29日に愛東町で第2回菜の花学会(楽会)を開催する予定です。是非,実践総合農学会の会員の皆様,ならびに『食農と環境』の読者の皆様にご参加いただき,菜の花プロジェクトのより一層の広がりと,地域の農業・環境を守り快適な暮らしを実現する方法を一緒に考えていきたいと思います。お待ちしております。」
 

  聞き手:ルポライター 秩父啓子
   
   

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