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 リーディングカンパニー訪問

  
  
アレフ  健康と環境を守るトップランナー
 

 
 

 

  ■アレフは何をめざしているのか
   成功した経営者,とりわけ創業者の場合,エネルギッシュ,独裁的,カリスマといった言葉でイメージされる場合が多い。しかし,アレフの創業者である庄司昭夫社長は,従来のオーナー経営者の範疇に全く収まらない。そのやさしさは,宮沢賢治を生んだ岩手の自然が育てたものであろう。哲学者と思えるような経営理念は,若い庄司社長を温かく指導してくれた数多くの先輩経営者と商業界の各種のセミナーで体得したものである。また,若い頃のジャズミュージシャンとしての修行も人間形成に大きな役割を果たしている。

←哲学者のような圧司社長
   ジャズ発祥の地であるとともに,自由の国アメリカに憧れた庄司社長が,最初に故郷盛岡で取り組んだのが「ハンバーガー」ショップであった。しかし,この挑戦はマクドナルドの日本進出を目の当たりにして転換を余儀なくされた。こうした中で,ごはんとハンバーグを一体化させたハンバーグの専門店(ベル)を開業した。資金が少ない創業時は,店づくり,メニューづくり,商品開発の全てが手作りで試行錯誤の連続であった。しかし,この当時から,商業界のセミナーで指導された「企業は社会の中で存在する」「損得より善悪が先」という経営理念を遵守した。その結果,この理念に共鳴した10人の若者が創業期メンバーに参加し,その後のアレフの成長を支えた。
   ハンバーグショップ「ベル」は大きな成功を納め,その後庄司社長はチェーンストア展開に挑戦した。しかし,急激な組織拡大は成功せず,大きな赤字を抱えることとなった。そのため,「お客様の得する店」を繁盛店の基本とし,固定客の獲得を目指し多様なメニュー開発をやめ,「ハンバーグ」に全てを賭け,ハンバーグレストラン「びっくりドンキー」を展開した。
   こうした固定客確保のためのこだわりが,「鮮度維持のためのハンバーグ製造・配送システム」「厳しい品質基準に基づくニュージーランド産牛肉(健康放牧牛)の確保」を促進し,その後のアレフの食材への徹底的なこだわりを決定づけた。
   また,レストランの繁盛とともに大きな問題になったのが食べ残しやゴミの処理問題であった。そのため,先駆的に微生物を活用した生ゴミの堆肥化技術の開発に取り組んだ。その結果,店舗単位での生ゴミの堆肥化に成功した。この取り組みは,アレフのその後の環境を守る活動展開のターニングポイントを形成した。こうした食材への徹底的なこだわりと環境問題への取り組みは,アレフの「シンプルに考え,マルチプルに行動する」という企業理念の基礎を形成した。
   こうしたアレフの挑戦は次第に大きな注目を受け,庄司社長に対して食・環境問題の著名人や学者との対談,業界や学会での講演依頼が相次いだ。強い目的意識,柔軟性,探求心をもった庄司社長は,こうした機会を積極的に活用し庄司哲学を完成させていく。特に現代を代表する哲学者・未来学者アーヴィン・ラズローの影響は大きく,「世界の全体性,相互依存性の認識に基づく未来創造」の重要性に心酔し,その後のアレフの企業の枠を超えた先駆的な環境を守る取り組みを決定づけた。
   現在のアレフの3つの課題は,@新しい店舗における使用エネルギーの30%削減,Aエサの完全自給による肉や乳製品の安全性の確保と食料自給率向上への挑戦,B不耕起乾田直播栽培への挑戦,である。こうした企業活動に挑戦する背景には,「3分の余裕」,すなわち7割の力で現在の経営を維持し,残りの3割の力を直接の営業でない仕事に挑戦するという,庄司哲学が流れている。また,庄司社長の頭には,これだけに止まらず「近代農法への疑問」「遺伝子組み換え作物のあり方」「バイオセキュリティ」「アニマル福祉」「遺伝資源の保存」「人間・植物・動物が共生する生物多様性社会の創造」「企業文化の創造」など,社会的存在としての新たな企業を創造していくという夢が溢れている。
 

  ■食へのこだわり
   アレフの食のこだわりは本物である。あえて本物といったのは,偽物が多いからである。庄司社長の言葉に従えば,「企業活動は消費者に便益を与えるが,同時に毒も出している。この毒の排出抑制にどれだけ真剣に取り組んでいるかが本物と偽物の分かれ道である」ということになる。現在,アレフでは「米の研究」「食肉の研究」「野菜の研究」を展開している。こうした食へのこだわりの基本には,「消費者の安全」と「自然・生態環境の保全」を大切にする思想がある。米については,現在,東北のこだわり米農家との契約栽培を実施し,アレフが策定した仕様書にしたがって省農薬米,無農薬米の生産が行われている。しかし,庄司社長は現状に満足することなく,「周辺環境の保全,生物多様性などのエコロジーを守るためには不耕起乾田直播栽培がベスト」であるという信念の実現を計画している。
   びっくりドンキーのハンバーグ,ハーフダイムのローストビーフなど,肉料理を中心としたアレフでは,肉の素材,鮮度,品質に徹底的にこだわる。特にBSEなどでその安全性が大きな問題となった牛肉については,厳しい飼養基準をクリアーした生産を実施しているニュージランドの契約牧場との取引を行い,BSEに対する消費者の不安を解消している。また,豚肉の場合は,国産豚肉を基本としながらも外国産豚肉も使用している。カナダの契約農場では,純植物性飼料で抗生物質を使用しない生産方法が採用され,オーストラリアでは広い解放豚舎で生産する農家とだけ契約を,また,日本でも広い豚舎で植物性飼料の使用と抗生物質の投薬基準をクリアーした農家とだけ契約をしている。
   アレフは1988年にいち早く実験農場を設立して,安全な食材確保のための技術開発に取り組んでいる。トマト,ダイコン,観賞用カボチャ,ズッキーニ,ルッコラ,ハーブなどの野菜の品種選定や堆肥(びっくりドンキーの生ゴミから生産)の最適散布量,化学肥料や農薬に頼らない農法確立のための独自の施肥基準,病害虫防除基準を開発している。これらの独自基準を開発することによって,全国の契約栽培農家から信頼できる野菜が得られるのである。
 

  ■環境へのこだわり
   アレフの環境へのこだわりは本物である。21世紀は地球環境の世紀と呼ばれているが,表面的にはいざ知らず,本当の意味で環境を守るための取り組みを実施している企業は少ない。この点について庄司社長は「環境というモノサシをあてた場合に80%以上の企業は合格しない」と述べている。レストランの生ゴミの処理から始まったアレフの環境問題への取り組みは,エコロジー店舗の開発へとその活動は進化している。まず,生ゴミは堆肥化だけに止まらず,メタン発酵でガス化して電気,熱源として利用している。また,箸については竹箸にし回収して炭化し,竹炭脱臭剤,竹炭ぼかし,堆肥資材,さらには竹酢液として回収・再利用してCO2 の削減を実現している。廃油については,1999年に軽油代替燃料VDF(ベジタブル・ディーゼル・フューエル)に再製造して,食材配送車の燃料としてリサイクルしている。
   なお,環境問題の取り組みとして,これ以外にも「天然ガス車の導入」「再利用可能なエコロジーユニホームの採用」「再生紙の活用」「さとうきびの絞りかすを利用した紙ナプキン」「無リン洗剤の採用」等,徹底的なこだわりを貫いている。
   また,今後の取組課題としているのは,発酵浄化による汚水のエネルギー化,地熱を活用した「地中熱ヒートポンプ」による店舗内の冷暖房の導入である。特に「地中熱ヒートポンプ」は,石油,ガス,電気などの化石燃料に依拠したエネルギー消費を大きく削減できる技術として力を入れている。
 

  ■アレフがめざす生物相互共生社会とは
   現在の取り組みの延長線上で将来のアレフの展開方向はある程度は予測がつく。しかし,ラズローに心酔する庄司社長は,「未来は予測するものでなくて創造するものである」という信念に基づき,「生物相互共生社会創造」への飽くなき挑戦を続けるであろう。また,「食」と書いて人を良くする,「食産業」と書いて良い人を生み出す生業と読ませるアレフでは,人と環境,そして様々な生物の多様な活動が,お互いの共生を生み出す社会であるという信念をもっている。すなわち,シンプルに考えマルチプルに行動するアレフの理念は,まさに実践総合農学会の理念と軌を一にするものであり,お互いに切磋琢磨して活躍したいと念願している。
 

  ルポ:本誌編集委員長 門間敏幸
   
 
   

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