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-実学の高度化を模索する学会-  Society of Practical Integrated Agricultural Sciences

実践性と問題解決力が素晴らしい高校生の取り組み

講評:実践総合農学会会長 門間 敏幸

2024年12月14日(土)に東京農業大学のサイエンスポートで開催されました実践総合農学会研究成果発表会におきまして、以下の3つの高校生の発表が行われました。

  1. 茨城県立水戸農業高等学校:「規格外イチゴの活用~ビジネスモデルの構築及び農福連携の推進~」
  2. 茨城県立水戸農業高等学校:「シャインマスカット栽培の普及で稲作農家所得倍増計画」#item1
  3. 東京都立農産高等学校:「味噌カレープロジェクト」

3つの発表のいずれにつきましても、非常に問題意識が明確で、農家が抱えている課題の解決、食品企業との連携による新たな食品の開発に関わる実践的な取り組みでした。

 

「規格外イチゴの活用~ビジネスモデルの構築及び農福連携の推進~」

茨城県立水戸農業高等学校

水戸農業高校農業研究部の「規格外イチゴの活用」の取り組みは、食品ロスの削減という問題意識をもってイチゴ農家が規格外のイチゴを廃棄している現場を見たことから、規格外イチゴの有効利用を考えたものです。規格外イチゴの利用に関する様々な試行錯誤を経て「イチゴの生パスタ」を開発し、様々なイベントでの販売を経験するとともに、農福連携による商品の生産にも取り組み、活動の幅を地域に広げていきました。こうした取り組み経験に基づき規格外イチゴの収益性に関して綿密な経営試算を行ってビジネスモデルを作成し、学生による法人化に向けた取り組みを行うなど、実に意欲的な活動を展開しています。商品原料を提供してくれる生産者との連携、商品開発戦略、販売戦略を地域活性化に結び付ける法人づくりとその持続的な展開が期待されます。

  

  

  

 

 

「シャインマスカット栽培の普及で稲作農家所得倍増計画」

茨城県立水戸農業高等学校

水戸農業高校農業科果樹専攻は、小規模稲作農家の減少、稲作経営の収益性の低下という現在の稲作経営が抱える問題の現状を関係機関から説明されて地域農業の持続に危機感を持った果樹専攻の生徒たちによる小規模稲作農家の持続性確保につながる意欲的な収益改善計画に取り組みました。生徒たちは、田植え後に使わなくなった空き水稲育苗ハウスを多面的に活用する高級ブドウ「シャインマスカット」の根圏制御栽培にチャレンジし、その成果を周辺の農家に普及を試みました。ブドウ栽培の経験が無い農家さんに栽培技術を普及するため、実用的な栽培カレンダー、ハウス利用計画をわかりやすく示すとともに、ジベレリン処理技術の指導を行い、栽培2年目から収獲できて収入が確保できる仕組みを考えました。この技術を周辺の3ha未満の中小規模農家に普及して収益向上を実現する等、着実に成果を上げています。この取り組みは、中小規模稲作農家の経営複合化による収益向上モデルを提起しており、「シャインマスカット」に限らず、他の果樹と稲作との複合経営の道を開くものであり、今後の展開がおおいに期待されます。

  

  

  

 

 

「味噌カレープロジェクト」

東京都立農産高等学校

東京都立農産高等学校の「味噌カレープロジェクト」は、農業高校の中でもユニークな醸造室を保有して杉樽を利用した味噌「かめさん味噌」(学校がある葛飾区を舞台とした人気漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」にちなんで命名)を生産していることがきっかけとなっています。この味噌の有効利用を地域の企業と連携しながら実現したいという強い思いから「みそカレー」プロジェクトがスタートしました。地域内の食品加工企業㈱ワタナベ食品と連携して試作を繰り返しながら、2024年に「味噌カレールウ」を開発・商品化をして世に送り出しました。このカレールウからカレーライスを作り販売してその味の向上を図り、カレールウを葛飾区の産業フェア、学園祭、マルシェなどで個数限定で販売し、短時間で完売する等、人気を獲得しています。将来は、「味噌カレー」を「葛飾区のソウルフード」にしたいという大きな夢をもって活動を展開する等、地域への貢献を強く意識した意欲的な活動を展開しています。