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-実学の高度化を模索する学会-  Society of Practical Integrated Agricultural Sciences

高校生による発表の紹介

実践総合農学会会長 門間 敏幸

 

2025年度実践総合農学会秋季大会(12月13日(土)東京農業大学で開催)において、2件の高校生による発表が行われましたので、その概要を紹介します。

 

コケッコ経営で築く!~地域と歩む持続可能な畜産のカタチ~

群馬県立勢多農林高校

群馬県立勢多農林高校の発表

群馬県立勢多農林高校の発表

勢多農林高校は、明治41年に群馬県勢多郡立農林学校として開校し、今年度で創立115年目を迎える長い歴史と伝統がある学校である。「明るく浄く 真面目に考え 雄々しく働け」の校訓の下で教育を実践している。「地域社会や農業関連産業の発展に寄与できる有為な人材育成」の教育方針で育てられた卒業生は2万人を超え、群馬県内のみならず広く産業・経済、政治、教育、文化など各方面で活躍している。

今回報告を行ったのは、令和4年に農場HACCPの認証を取得するとともに、それを契機として実践した持続可能な採卵鶏の飼育管理経営を目指した活動である。具体的には食品廃棄物の活用による環境負荷軽減の取り組み、①エコフィードの給与、②卵黄色の改善による卵のブランド化、③採卵率向上による収益向上、④卵の販路拡大等の活動である。エコフィードについてはパンくずを配合した給与試験を実施し、その効果を確認した。卵黄色の改善については、アメリカザリガニを様々な場所から捕獲して粉末化して給餌し卵黄色の改善に一定の効果があることを確認、産卵率の向上における日長時間の検討、イベント・訪問販売・洋菓子店での商品開発などに取り組み、売れ残りの解消による収益改善を実現した。

このように、採卵鶏の新たな飼育技術の改善だけにとどまらず、持続可能な採卵鶏経営の実現に向けて、明確な目標設定に基づいて販路の開発・拡大まで取り組み成果を実現している。勢多農林高校の取り組みは、まさに実学を目指す実践総合農学そのものの取り組みであり、高く評価することができる。

 

磐農生と巡る食と農の魅力旅~つながることは幸せの第一歩~

静岡県立磐田農業高等学校

静岡県立磐田農業高等学校の発表

静岡県立磐田農業高等学校の発表

静岡県立磐田農業高等学校は、北に南アルプス、南に遠州灘を望み、西に天竜川が流れる磐田原の南端に位置している。自然豊かな環境の中に、農場をはじめとする多様な学習の場を有している。中遠簡易農学校として1896年(明治29年)に開校以来、静岡県農学校、中泉農学校、磐田農業高校へと校名は変遷したが、この間一貫して『高品性・重労働(品性を高うして、労働を重んずる)』の校訓の下、全人教育を実践し、2万1千名の卒業生を静岡県内ならびに関係各方面に送り出してきた。

今回報告を行った磐田農業高校の取り組みは、「令和の米騒動」に大きな不安を覚えた高校生たちが、「今こそ、誰もが幸せになるお米の価格を考える時だ!」と立ち上がり、生産者と消費者がお互いに理解して「つながる」ための取り組み(食と農の魅力旅)の実践活動である。具体的には、磐農生が企画・運営する「磐田市の魅力的な食と農を案内する観光ツアー」に関する3年間の実践である。1年目は、観光ツアーに参加した消費者による市内のお茶工場見学、抹茶スイーツ試食、無農薬・無化学肥料で生産している市内農場でのニンジンの収穫と試食、地元食材を利用した昼食サービスの提供を行った。2年目は旅行業者と連携して、さらなる地元のこだわり農家、地元食材を利用したピザを食べる取り組みを実施し、これらの取り組みが消費者の生産者や地元食材に対する理解向上に効果があることを確認した。さらに、3年目はお米に対する理解を高めるために田植え体験、水田の生き物調査、稲刈り体験、鳥獣被害とジビエ食の体験を行った。これらの体験ツアーに参加した消費者を対象に、お米の適正価格調査を行い3,010円/5kgが適正であると消費者は考えていること、さらに生産者の生産コストを提示して「誰もが幸せになるために」消費者が支払っても良いと考える適正価格は3,842円/5kgであること、生産者の今年の販売価格3,600円/5kg(必要経費2,880円、利益率720円)であることを協力稲作農家の調査から確認した。こうした情報をもとに3,600円/5kgで注文販売を支援するとともに、3年間の取り組みで農家12軒、飲食店6軒とのネットワークを構築して、活動の持続性を確保している。

これらの磐農生の取り組みは、「推し農」による農業応援団の獲得により、農産物の適正価格や地域の自然環境・景観を守る活動を通して「人々を幸せにする」という目標を実現できる非常に優れた取り組みであるとともに、「令和の米騒動」に大きな一石を投じる貴重な情報を提供しているユニークな活動であり、農業・環境・食に関わる問題解決に取り組む実践総合農学会の今後の活動に対しても大きな示唆を与えてくれる素晴らしい報告であった。