header_231112_8
header_231112_7
header_231112_9
header_231112_10
header_230328_1
header_230328_2
header_230328_5
previous arrow
next arrow
-実学の高度化を模索する学会-  Society of Practical Integrated Agricultural Sciences

素晴らしい個別研究報告と高校生の発表に感激!!

 11月11日(土)・12日(日)に山梨県北杜市で開催された2023年度実践総合農学会第16回大会では、学会員による7課題の個別研究報告と、2件の高校生の実践活動の成果が報告された。いずれも素晴らしい報告であったので、学会のHPで紹介させていただきます。 

 <個別研究報告>

 個別研究報告は、いずれも学部学生、大学院生によるものであるが、その内容はいずれも学生の域を超えるオリジナリティが高く、実践的な素晴らしい研究成果が得られたものであった(報告課題一覧はHPに掲載してあるので参照してください)。3つの報告課題は、規格外農産物の消費拡大を加工品の利用拡大、消費者に対してどのような情報提供をするのが有効か、消費者の農業や食品への関心の程度や内容について解明したものであり、いずれも興味深い結果が得られている。消費者データの獲得と分析についても、Best Worst Scaling、ナッジ理論、パス解析などの分析手法を用いて数量的な評価がなされている。さらに、分析を多面的な角度から評価することにより更なる新知見が得られることが期待できる素晴らしい研究成果であった。

 沖縄県の離島における入島税の訪問者の支払意思額の推定では、その利用に関して適切な情報を提供することによって支払意思額は大きく高まることを明らかにしている。この研究成果は、入島税の見直しを検討している離島の町村担当者に有用な情報提供となるであろう。視覚障害者を対象とした農業体験プログラムの開発に関する研究は、研究発表者本人が視覚障害者であり、極めて実践的でオリジナリティの高い研究が実施されている。この研究成果を活かして視覚障害者のための農業体験マニュアルが作成されれば、様々な農業経営体や障害者福祉施設で有効に活用できるであろう。第6、第7報告は同一学生による昆虫食としてのコオロギの効率的な飼育方法に関するものである。第6報告では、コオロギのエサとしての昆虫粉末の活用の可能性について、第7報告ではコオロギ飼育と飼育残渣を活用した作物生産というハイブリッドな活用の可能性が検討された。いずれの研究もユニークな発想の下で実施されており、今後の研究深化が期待されるものであった。

 以上の7つの報告に対して、いずれにも優秀研究発表賞を授与したかったが、審査員一同の苦渋の評価により、池内風香・町田玲子氏の発表「視覚障害者を対象とした農業体験プログラムの試み」を優秀研究発表賞に選定した。

三木さん・棚井さん報告風景

三木さん・棚井さん報告風景

池内さん報告風景

池内さん報告風景



 

 <高校生による活動報告>

 山梨県立農林高等学校の活動報告「農林高校ワイン「17ans(ディセタン)」~ブランド化と販路開拓を目指して~」は、高校生によるワイン醸造とそのマーケティングの取り組み活動を紹介したものである。「お酒を飲めない高校生に美味しいワインが果たして作れるのか?」という疑問の中で開始された取り組みであるが、周囲の懸念を見事に払しょくした素晴らしい成果を実現している。ワインの高品質化に対しては、専門家の指導を受けながらドライアイスによる酸化防止、オリ下げ剤の活用などの工夫を行い、みごとに山梨県ワイン醸造組合のGI審査に合格している。また、ブランド化に関しては、フランス語で17歳を意味する「17ans(ディセタン)」というブランド名を工夫し、インスタグラムや地域の直売会への出品で地道に知名度を高め、甲斐市のふるさと納税返礼品に採用されている。ブドウやワインの産地である山梨県という地域の特性を活かした高校生によるチャレンジであり、その取り組みと成果に大きな感動を覚えた。

 栃木県立那須拓陽高等学校の「拓陽SoyProの活動2023」は、栃木県内に多く存在している在来大豆」の品種保存と有効活用の2つの視点からのユニークな取り組み活動の成果が報告された。その活動内容を見ると、栽培技術の工夫としての生態系調和型理論(BLOF理論)の実践、認知度向上と消費拡大のためのユニークな取り組み「おうちDEたねまき」(在来大豆の種を家庭に配布して栽培してもらい、生産した大豆を高校に納入してもらう)、工業系高等学校と連携した大豆調整作業の合理化、特別支援学校との連携による大豆加工品(味噌、醤油、納豆、きなこ)の開発、さらには3校合同でのマルシェの実践など、在来大豆のもつ力を多面的に活用して地域に発信する活動をマルチに展開している。こうした在来大豆を活かした取り組み「種を継いで、地域をつなぐ」の展開により、地域に交流の輪が広がり、大豆の新たな価値の創出が歩み始めている。今後の広がりを期待したい。

山梨県立農林高等学校生徒さん報告風景

山梨県立農林高等学校生徒さん報告風景

栃木県立那須拓陽高等学校生徒さん報告風景

栃木県立那須拓陽高等学校生徒さん報告風景




                       (実践総合農学会長 門間記)