実践総合農学会会長 門間 敏幸
2025年度の実践総合農学会秋季大会の個別研究発表は、2025年12月13日(土)9:00~12:00に東京農業大学において、ハイブリッド方式で開催された。今年度は、以下の8つの課題の報告があった。いずれの研究も今日問題となっている課題をとり上げ有意義な研究結果が得られている。本学会では、若手研究者の研究意欲・研究成果の発表意欲向上のため、個別報告の発表に対して、以下の2つの表彰を行っている。
(1)優秀研究発表賞【若手研究者部門】
特に優れた研究を発表した者のうち、大会報告時に35歳未満で学生会員を除く者を対象とする。
(2)優秀研究発表賞【学生部門】
特に優れた研究を発表した者のうち,大会報告時に35歳未満の学生(大学院生を含む)を対象とする。
今回の8つの報告は、いずれも学生・大学院生による報告であり、優秀研究発表賞【学生部門】の審査を行った。
<個別課題・発表者一覧>
| 第1報告 | 農福連携に対する障がい者の参加意向の解明に関する研究 -知的障がい者へのアンケートをもとに- 平石麗*・河野洋一**(*帯広畜産大学 **帯広畜産大学 次世代農畜産技術実証センター) |
| 第2報告 |
本山茶生産地における担い手確保および茶園保全の方策と課題 望月麻衣・半田 唯清・山田崇裕(東京農業大学国際食料情報学部) |
| 第3報告 |
食品スーパーの販売促進と消費者の購買計画が食品ロス削減に及ぼす影響 小倉多玖馬・一村茉奈佳・谷高千春・小貫杏菜・大崎紋佳・藤森裕美・大浦裕二・菊島良介 (東京農業大学国際食料情報学部) |
| 第4報告 | 家庭内直接廃棄削減に向けた情報提供と意識・行動変容に関する分析 -小売店における非計画購買を想定したナッジ理論に基づく情報提供の影響- 鈴木愛実・桐山実世・前田航希・増田創・本多采良武・大浦裕二・藤森裕美・菊島良介 (東京農業大学国際食料情報学部) |
| 第5報告 | 農山村における移動販売事業の経済的自立性 ―青森県南部町商工会と新潟県小千谷市たかのスーパーの比較― 吉田翔・寺澤龍哉・川田暖心・藤村祥伍・間中柊・篠田幸之介・手島光希・鈴木一颯・ 小暮樹実・中窪啓介・高柳長直・山本陽子・野口敬夫(東京農業大学国際食料情報学部) |
| 第6報告 | 宮古島の農業に関する問題構造の解明 黒田美羽*・伊藤風香*・及川怜*・矢尾田清幸**・田中裕人* (*東京農業大学国際食料情報学部 **沖縄県農業土地改良事業団体連合会) |
| 第7報告 | マイナー伝統野菜の作付者・消費者意識と課題-前橋市を対象として- 宮内鍊(元東京農業大学)・大江靖雄(東京農業大学) |
| 第8報告 | 農の生きがい形成に関する要因を探る-秋田県を対象として- 畑山千弥(元東京農業大学)・大江靖雄(東京農業大学) |
以上の8課題を対象に、4名の審査員によって「研究資料の明解さ」「報告の明解さ」「研究内容の意義」「研究内容の達成度」「総合評価」という5つの評価項目で、5段階での評価を行い、4人の審査員の総合評価得点の平均が高い報告から優秀研究発表賞【学生部門】を選抜した。その結果、以下の3報告が選抜された。
| 第1報告 | 農福連携に対する障がい者の参加意向の解明に関する研究 -知的障がい者へのアンケートをもとに- 平石麗*・河野洋一**(*帯広畜産大学 **帯広畜産大学 次世代農畜産技術実証センター) |
| 第4報告 | 家庭内直接廃棄削減に向けた情報提供と意識・行動変容に関する分析 -小売店における非計画購買を想定したナッジ理論に基づく情報提供の影響- 鈴木愛実・桐山実世・前田航希・増田創・本多采良武・大浦裕二・藤森裕美・菊島良介(東京農業大学国際食料情報学部) |
| 第5報告 | 農山村における移動販売事業の経済的自立性 ―青森県南部町商工会と新潟県小千谷市たかのスーパーの比較― 吉田翔・寺澤龍哉・川田暖心・藤村祥伍・間中柊・篠田幸之介・手島光希・鈴木一颯・小暮樹実・中窪啓介・高柳長直・山本陽子・野口敬夫(東京農業大学国際食料情報学部) |
平石らの報告は、北海道十勝地域で農業経営体(池田町ブドウ・ブドウ酒研究所)と福祉事務所が行っている農福連携の取り組みを対象に、直接的な影響を受ける障がい者の意向調査に基づいて、作業内容、コミュニケーションのあり方に関する課題を調査・分析して、障がい者の特性に合った農福連携の推進方法の解明を試みたものである。特に農福連携の経験が10年未満と10年以上に分けて、その違いを解明して有意義な情報を提供した点が高く評価された。
鈴木らの報告は、家庭で発生する食品ロスについて、消費者自身の購買計画の不十分さに要因があると仮定し、家庭内の直接廃棄削減に向けた情報を知識として提供して、その知識が「消費者の意識」に定着するか否かを、ナッジ理論を適用して情報提供してから一定期間後の「行動」の継続度を消費者アンケートに基づいて分析した。その結果、家庭内の直接廃棄を削減するためには、購入後すぐに行う行動に関する情報ほど意識に定着されやすいことが明らかになり、行動内容・行動意図を明確に説明することで、行動が継続されやすいことが示唆された。
吉田らの報告は、農山村の移動販売事業を対象に、実施主体ごとの事業の自立性、採算性確保上の問題が、それぞれの実施主体(営利団体、非営利団体)と地域特性が異なる青森県、新潟県における移動販売事業を対象に克明な実態調査によって解明が試みられた。その結果、移動販売の採算性の向上におけるドライバーの貢献の大きさ、食料品店などの営利団体による移動販売では、少量仕入れに伴うコスト、在庫ロスに伴うコストを抑える経済的自立性確保の取り組みが行われている実態を解明した。
以上の3つの研究は、研究内容は異なるが明確な問題意識に基づき研究テーマが絞り込まれ、克明な実態調査、アンケート調査に基づく科学的な分析に基づき、問題解決に有効な新たなかつ有意義な知見を獲得した。また、資料の整理・発表も立派であり、審査員一同一致して優秀研究発表賞に選抜させていただいた。おめでとうございます。







